-----------------------------------
★ネットショップ
→市場の古本屋ウララ 通信販売部
★店主の本
□『アーケードの本』市場の古本屋ウララ
2024年10月発行
□『すこし広くなった 「那覇の市場で古本屋」それから』ボーダーインク
2024年5月発行
□『三年九か月三日 那覇市第一牧志公設市場を待ちながら』市場の古本屋ウララ
2023年3月発行
□『増補 本屋になりたい』ちくま文庫
2022年7月発行
□『市場のことば、本の声』晶文社
2018年6月発行
□『那覇の市場で古本屋 ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』ボーダーインク
2013年7月発行
2023年10月第2版出来
-----------------------------------
2025年01月13日
「散歩と憶測」第10回 ニュータウンで見つけた「市場」
ライターの一柳亮太さんに、当店のメールマガジンで『散歩と憶測』という文章を連載してもらっています。
毎月、月末に一柳さんから原稿が届くのですが、11月末に受けとった第10回の原稿についてちょっと引っかかる部分がありました。詳しく聞いてみたくて、12月6日にstand.fmのオンライン収録でお話をうかがいました。
簡単に結論が出る話ではなく、おたがいに考えこみながら1時間弱も話してしまいました。聞いて楽しい話でもないかと思いますが、もし興味をもってくださる方がいらしたら、下のリンクからお聞きください。
https://stand.fm/episodes/67524d654031a298a95e2948
一柳さんも、ご自身のnoteでこの件について書かれています。
https://note.com/yanagi1/n/nf950fa6f39be
また、連載第10回の原稿を以下に公開します。ぜひお読みください。
・・・
【連載】『散歩と憶測』一柳亮太
第10回 ニュータウンで見つけた「市場」
先日、横浜市青葉区に行った。私が暮らす泉区とは同じ横浜市内だが、電車だと乗り換えが多く、直線距離の割に遠回りする位置関係なので、滅多に行く機会がない。青葉区で訪ねたのは、藤が丘。東急田園都市線の沿線、ニュータウン多摩田園都市にある街といえば、雰囲気がつかめるだろう。落ち着いた高級住宅地だ。
藤が丘駅やその周辺は、同じ田園都市線の沿線の青葉台やたまプラーザ駅とはまた雰囲気が違う。急行が停まり、デパートが出店し、ニュータウンの核とする計画で作られた駅とは異なり、各駅停車だけが止まる小さな駅だからこその落ち着いた感じがする。
そんなことを思いながら駅前を見ると、2階建ての屋根の上に「藤が丘ショッピングセンター」と、今時珍しい箱文字の看板が置かれた建物があった。1階部分の前には、丸みを帯びたデザインの日除けが設置され、より一層昔ながらの商業施設らしい雰囲気を醸し出している。
近づいてみると、正面中央にあったスーパーは既に撤退し、やや侘しさを感じる雰囲気だった。それでも専門店が連なる通りにまだ残っている店は賑わっていて、特にラーメン屋さんは人気らしくお客さんが行列していた。通りのお店の看板やロゴも懐かしさがただよう。
今の商業施設では、商店街に見立てたような、個人経営の専門店が連なる通りは、まず作らない。売り手だけでなく客の側も、市場で買い物をしてきた人たちばかりだった時代、ゆえに人工的な街にも、スーパーだけでなく市場のような商業空間がまだ求められたのだろう。
「中庭」もあった。トンネルのような通路を潜ると、建物に囲まれて空が見える空間に出た。お店用駐車場らしいその場所に入った時、藤が丘ショッピングセンターの建物がとても気に入った。だが、ショッピングセンターの一角には、計画中らしき再開発の事務所があり、近い将来このショッピングセンターが消滅してしまうのも分かった。
再開発事務所の前に昔の写真が展示されていて、1967年にこのショッピングセンターが開業した時の写真が見られたのは良かった。おめかしした女性たちが談笑している写真もあったが、あまりに出来すぎている構図なので、モデルを呼んだのだろうか。「モダンでしょうしゃな建物」と紹介する記事の切り抜きもあって、新しいお店がオープンする嬉しさ、初々しさを感じる。
このショッピングセンターは、那覇のマチグヮーのように、自然発生的に生まれた市場ではない。ニュータウン開発とともに開業した鉄道の駅前に置かれた、いわば人工的な施設だ。しかし、各駅停車しか停まらない小さな駅と、その駅前にあるお店に集まるお客さんは、ほとんどが近くに住む人々だったのではないだろうか。人為的に生み出された場であったとしても、大げさに言えば住民の生老病死を57年ものあいだ見続けてきたショッピングセンターは、手に馴染むように使い込まれて、まるで市場のような雰囲気を醸し出すのだろう。
私も含め、非日常として市場を使うような世代にとっては、マチグヮーのような空間は、必須の存在ではない。藤が丘も再開発が進めば、ショッピングセンターの市場的空間もあっさり消えてしまうだろう。ここがニュータウンだから特別なのではなく、あらゆる市場が同じように消えてしまうかもしれない。いや、現実にもう消えている。それはいやなのだけど、どうしたら良いのだろう。
『那覇のアーケードを隅々まで』一柳亮太
https://urarabooks.stores.jp/items/66fcc1e2dc901c0542416a1c
『マチグワカイ ユーメンソーチェビーサヤー 那覇市にあった公設市場10カ所の訪問記』一柳亮太
https://urarabooks.stores.jp/items/641e7417613f7d0028bf6802
・・・
メールマガジンは毎月、最初の営業日に配信しています。ご登録はこちらから↓
https://urarabooks.stores.jp/
右上の「LOGIN」ボタンから「新規会員登録」をしてください。

毎月、月末に一柳さんから原稿が届くのですが、11月末に受けとった第10回の原稿についてちょっと引っかかる部分がありました。詳しく聞いてみたくて、12月6日にstand.fmのオンライン収録でお話をうかがいました。
簡単に結論が出る話ではなく、おたがいに考えこみながら1時間弱も話してしまいました。聞いて楽しい話でもないかと思いますが、もし興味をもってくださる方がいらしたら、下のリンクからお聞きください。
https://stand.fm/episodes/67524d654031a298a95e2948
一柳さんも、ご自身のnoteでこの件について書かれています。
https://note.com/yanagi1/n/nf950fa6f39be
また、連載第10回の原稿を以下に公開します。ぜひお読みください。
・・・
【連載】『散歩と憶測』一柳亮太
第10回 ニュータウンで見つけた「市場」
先日、横浜市青葉区に行った。私が暮らす泉区とは同じ横浜市内だが、電車だと乗り換えが多く、直線距離の割に遠回りする位置関係なので、滅多に行く機会がない。青葉区で訪ねたのは、藤が丘。東急田園都市線の沿線、ニュータウン多摩田園都市にある街といえば、雰囲気がつかめるだろう。落ち着いた高級住宅地だ。
藤が丘駅やその周辺は、同じ田園都市線の沿線の青葉台やたまプラーザ駅とはまた雰囲気が違う。急行が停まり、デパートが出店し、ニュータウンの核とする計画で作られた駅とは異なり、各駅停車だけが止まる小さな駅だからこその落ち着いた感じがする。
そんなことを思いながら駅前を見ると、2階建ての屋根の上に「藤が丘ショッピングセンター」と、今時珍しい箱文字の看板が置かれた建物があった。1階部分の前には、丸みを帯びたデザインの日除けが設置され、より一層昔ながらの商業施設らしい雰囲気を醸し出している。
近づいてみると、正面中央にあったスーパーは既に撤退し、やや侘しさを感じる雰囲気だった。それでも専門店が連なる通りにまだ残っている店は賑わっていて、特にラーメン屋さんは人気らしくお客さんが行列していた。通りのお店の看板やロゴも懐かしさがただよう。
今の商業施設では、商店街に見立てたような、個人経営の専門店が連なる通りは、まず作らない。売り手だけでなく客の側も、市場で買い物をしてきた人たちばかりだった時代、ゆえに人工的な街にも、スーパーだけでなく市場のような商業空間がまだ求められたのだろう。
「中庭」もあった。トンネルのような通路を潜ると、建物に囲まれて空が見える空間に出た。お店用駐車場らしいその場所に入った時、藤が丘ショッピングセンターの建物がとても気に入った。だが、ショッピングセンターの一角には、計画中らしき再開発の事務所があり、近い将来このショッピングセンターが消滅してしまうのも分かった。
再開発事務所の前に昔の写真が展示されていて、1967年にこのショッピングセンターが開業した時の写真が見られたのは良かった。おめかしした女性たちが談笑している写真もあったが、あまりに出来すぎている構図なので、モデルを呼んだのだろうか。「モダンでしょうしゃな建物」と紹介する記事の切り抜きもあって、新しいお店がオープンする嬉しさ、初々しさを感じる。
このショッピングセンターは、那覇のマチグヮーのように、自然発生的に生まれた市場ではない。ニュータウン開発とともに開業した鉄道の駅前に置かれた、いわば人工的な施設だ。しかし、各駅停車しか停まらない小さな駅と、その駅前にあるお店に集まるお客さんは、ほとんどが近くに住む人々だったのではないだろうか。人為的に生み出された場であったとしても、大げさに言えば住民の生老病死を57年ものあいだ見続けてきたショッピングセンターは、手に馴染むように使い込まれて、まるで市場のような雰囲気を醸し出すのだろう。
私も含め、非日常として市場を使うような世代にとっては、マチグヮーのような空間は、必須の存在ではない。藤が丘も再開発が進めば、ショッピングセンターの市場的空間もあっさり消えてしまうだろう。ここがニュータウンだから特別なのではなく、あらゆる市場が同じように消えてしまうかもしれない。いや、現実にもう消えている。それはいやなのだけど、どうしたら良いのだろう。
『那覇のアーケードを隅々まで』一柳亮太
https://urarabooks.stores.jp/items/66fcc1e2dc901c0542416a1c
『マチグワカイ ユーメンソーチェビーサヤー 那覇市にあった公設市場10カ所の訪問記』一柳亮太
https://urarabooks.stores.jp/items/641e7417613f7d0028bf6802
・・・
メールマガジンは毎月、最初の営業日に配信しています。ご登録はこちらから↓
https://urarabooks.stores.jp/
右上の「LOGIN」ボタンから「新規会員登録」をしてください。

Posted by 市場の古本屋 ウララ at 13:50
│店の紹介